佐賀城は、佐賀県佐賀市城内に位置する日本の城で、古名は佐嘉城とも呼ばれています。江戸時代初期に完成し、外様大名であった佐賀藩鍋島氏の居城として知られています。また、城は「沈み城」や「亀甲城」といった別名でも親しまれており、平城の形式を持つ複合式の城郭を特徴としています。現在、佐賀城は佐賀城公園として整備されており、歴史的な遺構が残されているだけでなく、観光名所としても人気を博しています。
佐賀城の前身となる村中城は、鎌倉時代から戦国時代にかけて、肥前の戦国大名龍造寺氏によって築かれました。この城は、戦国時代の激しい戦闘を経て、鍋島氏によって慶長期に大規模な拡張と改修が行われ、現在の佐賀城の姿へと変貌を遂げました。
佐賀城は、周囲を幾重にも巡らせた堀や、防衛機能としての水の導入システムにより、敵の侵攻を防ぐ工夫が施されていました。堀には多布施川から大量の水が送り込まれ、敵の進軍を水没によって防ぐ仕組みがあったことから、「沈み城」と呼ばれることになったのです。加えて、城郭は松やクスノキで覆われ、外からは城が木々の中に沈み込んでいるように見えたことも、別名の由来となっています。
江戸時代になると、佐賀城は鍋島氏の居城として、城下町も発展しました。特に、城下には豊前小倉から長崎まで続く長崎街道が通り、宿場町としても栄えました。城内には掘割が縦横に巡らされ、生活用水として利用されていたことも特徴的です。しかし、明治時代初期に起こった佐賀の乱により、城内の多くの建物が焼失しましたが、鯱の門や続櫓だけは現存し、国の重要文化財に指定されています。
佐賀城は、平地に築かれた輪郭梯郭複合式の平城です。城郭の周囲は幅50m以上の堀があり、その堀は石垣ではなく土塁で築かれていました。このため、外部からの視界を遮るように、土塁には松やクスノキが植えられ、城が自然に溶け込んだ風景が広がっていました。
佐賀城は、城郭の完成予想図とされる「慶長御積絵図」とその後に描かれた現状の城下絵図を比較すると、櫓の削減や本丸・二の丸の石垣の簡素化が見られます。このため、佐賀城は厳密には未完成の状態であったとされています。
享保11年（1726年）の火災により、天守を含む多くの建物が焼失しました。現在の研究では、佐賀城の天守は小倉城と同等かそれよりもやや大きな規模であったと推測されています。2024年現在、佐賀城の東堀の復元計画も進行中で、往時の姿を取り戻しつつあります。
1874年（明治7年）、佐賀城は佐賀の乱の際に反乱軍に占拠され、鯱の門や続櫓を除くすべての建物が焼失しました。その後、鯱の門には当時の戦闘の際の弾痕が残されており、歴史の生々しい証拠として今も見ることができます。また、佐賀城址には学校や県庁などの公共施設が建設され、佐賀県の政治経済の中心地となりました。
本丸御殿は明治時代に裁判所や学校として利用されていましたが、佐賀の乱後には取り壊されました。しかし、2004年には木造で復元され、現在は佐賀県立佐賀城本丸歴史館として公開されています。また、本丸御殿の一番奥にあった「御座間」は、鍋島直正の居室として使われていましたが、1958年に他の場所に移築され、後に元の位置に戻されました。
佐賀城は、2006年4月6日に日本100名城の一つに選定されました。また、2012年からは天守台の大規模な発掘調査が行われ、佐賀城の天守は4重屋根ながら内部は5階建てであることが確認されました。この調査により、天守の内部構造や、金具の出土から窓の形式が明らかになり、歴史的な建築技術が再評価されています。
現在、佐賀城跡は佐賀城公園として整備されており、東堀や土塁の復元が進んでいます。これにより、かつての佐賀城の姿を訪れる観光客が楽しむことができるようになっています。特に、本丸御殿の復元は大きな魅力の一つであり、歴史的な建物の中で佐賀の歴史に触れることができるスポットとなっています。
佐賀城本丸歴史館では、佐賀城の歴史や鍋島氏の歴史を展示する資料が豊富に揃っています。また、館内では江戸時代の生活や政治、文化に関する展示も行われており、訪れる人々に佐賀の歴史の一端を体験する機会を提供しています。さらに、復元された本丸御殿の内部は、当時の姿を忠実に再現しており、見学者に深い感銘を与えることでしょう。
現在、佐賀城周辺には佐賀県庁や合同庁舎、放送局、美術館、博物館、学校などが立ち並び、佐賀県の政治や文化の中心地として機能しています。歴史的な遺構を守りつつ、現代の都市機能と融合している点も、佐賀城の魅力の一つと言えるでしょう。