天山は、佐賀県のほぼ中央に位置し、標高1,046.2メートルを誇る山です。天山は、佐賀県唐津市、小城市、佐賀市、多久市にまたがり、筑紫山地に属しています。この山は、自然豊かな環境と歴史的背景を持ち、多くの登山客や自然愛好者を魅了しています。
天山の西側には雨山(標高996m)というピークがあり、中央のピークが天山山頂です。脊振山地の南西端に位置し、雨山や東側の彦岳を含めて天山山地とも呼ばれることがあります。
天山の山体は、基部が花崗岩質で構成され、山頂部は蛇紋岩を含む岩石で覆われています。山頂部は比較的なだらかですが、南側の斜面は急勾配の開析地形を形成し、佐賀平野とを直線的に隔てる断層崖でもあります。
古くから、天山にかかる雲の様子を観察して天候を予測する文化がありました。また、冬になると天山から吹き下ろす季節風は「天山おろし」として知られ、佐賀平野の気候に大きな影響を与えています。
天山の山頂からは、北に玄界灘、南に有明海と佐賀平野を一望することができます。見晴らしの良い日には、遠くに雲仙岳や阿蘇山、その噴煙まで見えることもあり、絶景を楽しむことができます。
天山山頂には、南北朝時代に戦死した阿蘇惟直の墓があります。1336年(延元元年)、彼は筑前国多々良浜の戦いで足利尊氏に敗れ、阿蘇まで退却する途中で戦死しました。彼の墓は「阿蘇の煙が望見できる」天山山頂に地元住民によって葬られたと伝えられています。現在の墓塔は、1924年(大正13年)に建立された2代目のもので、それ以前は石積みの塔でした。従者の墓とされる小さな塔も隣にあります。
天山の9合目には天山神社の上宮があり、登山道沿いには古来より下宮が3か所に鎮座しています。これらの神社は、特に農民からの崇敬を集めてきました。下宮は、小城市小城町晴気にある晴気天山社、小城市小城町岩蔵にある岩蔵天山神社、唐津市厳木町広瀬にある広瀬天山神社として知られています。
天山は、石川達三の著作『青春の蹉跌』の舞台としても有名です。この作品の中で、若者たちが人生における葛藤と成長を描く背景として、天山の厳しい自然が重要な役割を果たしています。
かつて、天山全体は「あめやま」と呼ばれていましたが、現代では「天山(てんざん)」と「雨山(あめやま)」という呼び名に分けられています。この地域独特の歴史や文化が、天山という山に深く刻まれています。
天山周辺は、1970年(昭和45年)に「天山県立自然公園」として指定されました。この公園には、天山だけでなく、作礼山や彦岳といった他の山々や、見帰りの滝や清水の滝といった美しい景勝地が含まれています。面積は49.30平方キロメートルで、豊かな自然環境が広がっています。
天山の北麓には、かつて人工雪設備を備えた「天山スキー場」がありました。冬季には多くのスキーヤーやスノーボーダーが訪れましたが、新型コロナウイルスの影響や雪不足のため、2022年に閉鎖されました。
天山は、自然の美しさや歴史的な遺産に恵まれており、訪れる人々に様々な魅力を提供しています。以下に、天山周辺の観光スポットをご紹介します。
作礼山は、天山県立自然公園の一部であり、その自然の美しさが広く知られています。四季折々の風景が楽しめるこの山は、ハイキングやピクニックにも最適です。
彦岳もまた、天山山地の一部として知られる山で、自然愛好者に人気があります。静かな山中でリラックスし、自然と触れ合う時間を過ごすことができます。
見帰りの滝は、天山周辺の美しい滝の一つで、その名の通り、訪れた人が振り返ってもう一度見たくなるほどの美しさを持っています。自然の音と景観に癒されるスポットとして人気です。
清水の滝もまた、天山県立自然公園内にある名所で、落差のある滝が清涼感を与えます。特に夏場には多くの観光客が涼を求めて訪れます。
天山は、自然の豊かさと歴史的な背景を併せ持つ魅力的な山です。その美しい風景や、阿蘇惟直の墓、天山神社などの歴史的な遺産が、多くの人々に愛されています。また、周辺の天山県立自然公園や観光スポットも見逃せません。四季を通じて訪れる価値のある天山は、佐賀県を訪れる際にぜひ足を運んでいただきたい場所です。