東よか干潟は、佐賀県佐賀市東与賀町大授搦（だいじゅがらみ）の地先に位置する干潟で、鳥獣保護区として指定されています。この干潟は、有明海の奥部にあり、日本国内で最も多くのシギ・チドリ類が渡来する場所として知られており、環境省の調査でもその数が最大とされています。また、ラムサール条約に登録された湿地でもあり、自然の豊かさが評価されています。さらに、ここには紅葉する塩生植物「シチメンソウ」が自生しており、秋には美しい紅色に染まる景観が広がります。
東よか干潟は、干潮時には広大な干潟が姿を現し、満潮時には多くの水鳥が集まります。この地域には、シギやチドリをはじめとする多くの水鳥が渡来し、観察することができます。特に、渡りの時期には数多くの鳥たちが飛来し、干潟で休息をとる姿が見られます。干潟の生態系は非常に豊かで、多くの魚介類や小動物が生息しており、それらを目当てに鳥たちが集まります。
この干潟の正式名称は「東よか干潟」ですが、以前は「大授搦地先の干潟」と呼ばれていました。1989年から1992年にかけて行われた環境省の調査でも「大授搦」として扱われていましたが、2015年に鳥獣保護区として指定され、ラムサール条約にも登録されたことで、「東よか干潟」という名称が広く知られるようになりました。
鳥獣保護区としての東よか干潟の範囲は、東与賀海岸防波堤の西端から東端まで、そして西川副海岸防波堤の一部を含む広大なエリアです。特別保護地区として指定されているエリアもあり、これらはラムサール条約の登録地とも重なっています。
東よか干潟は、有明海の奥部に位置し、東与賀海岸と呼ばれる地域に広がっています。この地域は遠浅で、潮汐の変動が大きく、干潮時には広大な干潟が出現します。佐賀平野の低地は、河川からの堆積物と潮汐の作用によって形成された沖積平野であり、長い年月をかけて海岸線が変遷してきました。
有明海沿いの地域では、干潟で採れる魚介類を「まえうみもん」と呼び、古くから特有の漁法で採取し、食用としてきました。特にワラスボやムツゴロウ、シャッパ（シャコ）などが有名で、地域の食文化を支えてきました。しかし、近年では漁獲量の減少や食生活の変化により、漁業は衰退しています。一方、海苔の養殖業は戦後急速に発展し、現在も東与賀周辺の海域で盛んに行われています。
東よか干潟周辺の海岸線は、自然の陸化と人為的な干拓によって大きく変化してきました。特に、戦国時代から江戸時代にかけて小規模な干拓が行われ、明治時代以降は大規模な干拓が進められました。大授搦はその一環として1926年に工事が始まり、1934年に完成した干拓地です。この干拓によって、現在の東よか干潟の姿が形成されました。
東よか干潟の地質は、非常に軟らかい有明粘土層で構成されており、この粘土層が干潟の特徴的な泥質を形成しています。潮の満ち引きに伴って河川から運ばれた土砂が堆積し、干潟が次第に広がっています。有明海の潮流は反時計回りに流れ、特に筑後川河口付近では土砂の堆積が顕著です。
東よか干潟は年間約4.5cmの成長を続けており、干潟の生態系はますます豊かになっています。ここでは、多くの水鳥や魚介類が生息し、その生態系は非常に多様です。特に、シギやチドリ類の渡り鳥にとって重要な休息地であり、渡りの途中でエネルギーを補給する場として機能しています。
東よか干潟の保全活動は、他の干潟とは異なる経緯を辿ってきました。有明海全体として、その自然環境の価値が長らく軽視されてきましたが、1997年の諫早湾干拓による環境問題や、2000年の海苔養殖業の不作が契機となり、広く注目されるようになりました。
東よか干潟では、近年、エコツーリズムや自然観察が注目されるようになり、多くの観光客が訪れるようになりました。シギやチドリの観察を楽しむバードウォッチャーや、紅葉するシチメンソウの景観を求める観光客が増えています。また、地域の特産物や伝統的な漁法も観光資源として見直されており、干潟の自然を楽しむイベントも開催されています。
東よか干潟は、佐賀県の貴重な自然遺産であり、多様な生態系を持つ干潟です。特に、水鳥の渡来地として国内外から注目されており、ラムサール条約にも登録されています。また、紅葉するシチメンソウや独特の漁業文化など、多彩な魅力を持つ観光地としても発展しています。これからも、干潟の保全と観光資源としての活用が進められ、さらに多くの人々に愛される場所となることでしょう。