中冨記念くすり博物館は、佐賀県鳥栖市に位置し、公益財団法人中冨記念財団が運営する歴史民俗博物館です。この博物館は、地域の製薬業である「田代売薬」の歴史と文化を後世に伝えるために設立され、薬に関する貴重な資料や展示を行っています。
中冨記念くすり博物館は、1995年(平成7年)に久光製薬の創業145周年を記念して設立されました。田代売薬の歴史的価値を保存し、伝承することを目的としており、2010年(平成22年)には公益財団法人としての活動を開始しました。さらに、2016年(平成28年)には田代売薬に関連する製薬や行商の道具が「佐賀県重要有形民俗文化財」に指定され、その重要性が高く評価されています。
2021年4月には、博物館の内装デザインや展示内容、解説のグラフィックが一新され、リニューアルオープンしました。これにより、来館者はより分かりやすく、楽しく学べる環境が整えられました。
博物館の1階では「現代のくすり・世界のくすり」をテーマに、剤形別の薬の展示が行われています。中でも、19世紀末にイギリス・ロンドン郊外のハムステッドに建てられた「アルバン・アトキン薬局」が移設展示され、当時の薬局の雰囲気をリアルに再現しています。また、昭和期の大型製薬機械も展示されており、近代の製薬業の発展を感じることができます。
2階の展示では、「むかしのくすり・田代売薬」をテーマに、江戸時代から続く配置売薬業である「田代売薬」に関する展示が行われています。田代売薬は、富山、大和(奈良県)、近江(滋賀県)と並び、日本四大売薬の一つとして知られており、その製薬や行商の道具が紹介されています。また、薬の原料となる生薬の展示も行われており、昔の薬に使われた材料や製造方法について学ぶことができます。
博物館の屋外には薬木薬草園が併設されており、年間を通して約350種類の薬用植物を観賞することができます。訪れる季節によって異なる薬草を見ることができ、自然とのふれあいも楽しめるスポットです。
中冨記念くすり博物館の建物は、イタリアの著名な彫刻家であるチェッコ・ボナノッテによってデザインされました。彼の作品である《生命の種子》がエントランスに展示されており、訪れた人々を迎え入れるシンボルとなっています。独自の芸術的な雰囲気の中で、薬の歴史に触れることができる点も、この博物館の魅力です。
中冨記念くすり博物館の開館時間は午前10時から午後5時までで、最終入館は午後4時30分です。毎週月曜日が休館日となっており、月曜日が祝日の場合は翌日が休館日になります。また、年末年始も休館となるため、来館を予定している方は事前に確認することをお勧めします。
入館料は以下の通りです。
手頃な料金で歴史的な資料や展示を楽しむことができ、特に団体での訪問の場合はさらに割引が適用されます。
中冨記念くすり博物館へは、JR鳥栖駅からタクシーで約7分、または鳥栖市ミニバス田代地区循環線(火・木・土曜日のみ運行)「中冨記念くすり博物館前」で下車し、徒歩2分で到着します。さらに、JR弥生が丘駅からはタクシーで約3分、西鉄小郡駅からはタクシーで約13分の距離にあります。
車でのアクセスも可能で、博物館には駐車場が完備されています。ドライブを楽しみながら訪れるのも一つの楽しみ方です。
田代売薬は、江戸時代に佐賀県鳥栖市田代地域で発展した配置売薬業です。田代売薬は、先に述べたように富山、大和、近江と並んで日本四大売薬の一つとして数えられ、その独自の文化と商業システムが地域の発展に寄与しました。特に、田代売薬は行商を通じて全国に広がり、多くの家庭に薬を提供していました。
中冨記念くすり博物館は、薬の歴史や文化に関心がある方にとって、非常に貴重な知識を得られる場所です。展示内容は幅広く、現代の薬から昔の薬、さらには製薬の道具や薬草に至るまで、薬に関する多角的な視点から学ぶことができます。また、建物自体が芸術的であり、展示を通して薬の歴史に触れるだけでなく、建築美術も楽しむことができます。
中冨記念くすり博物館は、佐賀県鳥栖市で薬の歴史を学ぶことができる貴重な施設です。田代売薬の歴史や、薬の製造、販売に関連する資料が豊富に展示されており、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめます。博物館を訪れることで、薬の歴史や文化に対する理解を深めることができるだけでなく、薬草園で自然とのふれあいも楽しめるため、観光スポットとしても非常に魅力的です。