佐賀県立九州陶磁文化館は、佐賀県有田町にある陶磁器専門の県立美術館です。九州各地の陶磁器を中心に、特に有田焼や伊万里焼、唐津焼といった肥前地方の陶磁器を収蔵・展示しています。この館は、九州における陶磁器の歴史や美しさを広く伝える文化施設として、地元の人々や観光客に親しまれています。
佐賀県立九州陶磁文化館は、1977年(昭和52年)に佐賀県の計画に基づき、約17億4,510万円をかけて建設されました。1980年(昭和55年)3月に竣工し、同年11月1日に開館しました。以来、陶磁器の歴史的な価値や美術的価値を発信し続けています。
この美術館では、肥前地方の陶磁器に特化した展示を行っており、有田焼や伊万里焼、唐津焼といった名品を数多く収蔵しています。特に、有田焼や伊万里焼については、江戸初期から幕末までの変遷を辿ることができ、学術的価値の高い作品群が展示されています。また、九州各地の現代陶芸家による作品も展示されており、伝統と現代の陶磁器文化を楽しむことができます。
美術館には、国の重要文化財である「染付鷺文三足大皿」や「染付山水文輪花大皿」をはじめ、数多くの貴重な作品が展示されています。また、肥前地方以外にも、九州各県の陶磁器や、日本全国の名品が集められています。中でも、佐賀県の武雄古唐津焼や波佐見焼、長崎県の三川内焼、福岡県の高取焼、さらには鹿児島県の薩摩焼など、多様な地域の陶磁器が展示されています。
このコレクションは、江戸時代の初期から幕末までの有田磁器を体系的に集めた約1万点にも及ぶ作品群です。常時約1,000点が展示されており、有田焼の形状や色彩、技術の変遷を辿ることができます。2006年には、国の登録有形文化財(美術工芸品)に指定され、その学術的価値が広く認められています。
このコレクションは、ヨーロッパに輸出された古伊万里の品々を逆輸入したものです。特に、金欄手様式の作品が多く、オランダ東インド会社(VOC)の注文品も含まれています。また、伊万里焼を模倣してヨーロッパや中国で作られた品々も展示されています。
肥前の陶磁器をはじめ、九州各地の名品や、日本各地の陶磁器を集めたコレクションです。茶道具が多いことが特徴で、韓国や東南アジアの陶磁器も含まれています。
旧高取家住宅から寄贈された、来客をもてなすための陶磁器や文具などが展示されています。肥前の陶磁器が中心ですが、日本各地や海外の品々も含まれています。
有田出身の陶芸家・青木龍山の作品62点を収蔵し、定期的に4~5点が展示されています。
唐津出身の陶芸家・中里逢庵の作品も展示されており、陶磁器愛好家にとっては必見の内容です。
館内の展示ホールには、有田焼の9つの窯元と佐賀県が共同で製作した「有田焼からくりオルゴール時計」が設置されています。この時計は30分ごとに動作し、訪れる人々を楽しませます。
また、館外にはドイツ・マイセンの磁器製の鐘楼と日本製の奏鳴装置からなる日独合作のカリヨン「グロッケンシュピール」があります。毎正時に日本やドイツで親しまれる曲が演奏され、町中にその音色が響き渡ります。
さらに、館外にはマイセン市から有田町へ寄贈された白磁製の噴水「白磁冠火食鳥噴水」が設置されており、見どころの一つです。
館内3階にはカフェがあり、訪れた方々は昼食や飲み物を楽しみながら、ゆっくりとした時間を過ごすことができます。
佐賀県立九州陶磁文化館は、JR佐世保線有田駅から徒歩12分、タクシーで4分の場所に位置しています。また、西九州自動車道波佐見有田インターチェンジから車で約10分、長崎自動車道武雄北方インターチェンジからは車で約30分の距離にあります。駐車場は310台分完備されており、バスや身障者用スペースも設けられています。
この美術館の建物は、1980年に竣工し、日本建築学会賞やBCS賞を受賞しています。また、建物には珍しい雨樋のデザインが採用されており、壁を伝う形式の雨樋は非常に独創的です。これは建築家の隈研吾にも影響を与え、彼の作品にも同様のデザインが見られます。
佐賀県立九州陶磁文化館は、九州の陶磁器文化を知るための重要な美術館であり、歴史的価値の高い作品群を楽しむことができます。訪れる人々は、有田焼や伊万里焼をはじめとした多彩な陶磁器に触れ、九州の伝統文化に深く感動することでしょう。また、館内の充実した設備やアクセスの良さも魅力の一つであり、観光や学習の場として非常に価値のある施設です。