佐賀県西松浦郡有田町にある伝統的建造物群保存地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されています。この地区は、有田焼の産地として広く知られており、歴史的価値が高い建造物が保存されている地域です。保存地区の範囲は、有田町の岩谷川内、中の原、赤絵町、幸平、大樽、上幸平、泉山の一部に広がり、約15.9ヘクタールを占めています。
有田町有田内山地区は、17世紀初期より磁器の生産で発展した地域で、有田焼の産地として知られています。この地区は、江戸時代から昭和初期までに建てられた建物が多く、現在も当時の風情を残しています。特に表通りでは、歴史的な窯元や商家が立ち並び、和風と洋風が混在する独特な景観が特徴です。また、裏通りには窯屋や作業場が多く集まり、現在でも日々の生活や作業が営まれています。
有田町は、1989年に制定された「有田町都市景観条例」に基づき、保存地区としての景観保全に努めています。1991年4月30日には、この内山地区が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。佐賀県で初めての選定であり、その後も地域の伝統的景観を維持するための活動が続けられています。
この保存地区では、毎年ゴールデンウィークに「有田陶器市」が開催され、多くの観光客が訪れます。この時期には、地区内の通りが賑わい、多くの陶磁器が展示・販売されるため、観光名所としても注目されています。
地区名称: 有田町有田内山
種別: 製磁町
選定年月日: 1991年4月30日
選定基準: 伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの
面積: 15.9ha
車でのアクセス: 西九州自動車道波佐見有田ICから約5分
公共交通機関: JR九州佐世保線および松浦鉄道西九州線有田駅から徒歩約15分、またはJR佐世保線上有田駅から徒歩約5分
有田焼は、佐賀県有田町を中心に生産される磁器で、その品質と美しさから国内外で高く評価されています。製品は、歴史的な時代背景や製造様式により様々なスタイルに分類され、特に初期伊万里、古九谷様式、柿右衛門様式などが有名です。また、皇室に献上された禁裏様式や、鍋島藩のために焼かれた鍋島様式も高級磁器として知られています。
有田焼は、「伊万里焼」という名称でも知られています。江戸時代には、有田焼が伊万里港から積み出されていたため、伊万里焼と呼ばれるようになりました。現在でも海外では "Imari" として広く認識されています。明治時代以降、輸送手段が船から鉄道へと変わるにつれ、有田地区で生産される製品が「有田焼」、伊万里地区の製品が「伊万里焼」と区別されるようになりました。
有田焼の歴史は、17世紀初期にさかのぼります。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に同行した陶工、李参平が1616年に有田東部の泉山で白磁鉱を発見し、日本初の白磁を焼いたとされています。この発見により、有田は日本初の磁器生産地として発展しました。李参平は「陶祖」として尊敬されており、有田町には彼を祭神とする陶山神社もあります。
17世紀後半には、色絵磁器が登場し、その技術は中国から伝わったとされています。特に柿右衛門様式は、有田焼の代表的なスタイルであり、白地に鮮やかな赤を主調とした絵付けが特徴です。これらの磁器は、上品で繊細なデザインが評価され、国内外で高く評価されています。
有田町では、伝統的な技法を守りながらも、現代のニーズに合わせた製品も生産されています。有田陶器市をはじめとする様々なイベントや展示会が開催され、国内外から多くの観光客が訪れています。また、有田焼は伝統工芸品としても認められており、1977年には経済産業大臣指定の伝統工芸品に指定されました。
有田町有田内山の伝統的建造物群保存地区を訪れる際には、有田焼の歴史や美しさを感じながら、町の風景や伝統を楽しむことができます。