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唐津市

(からつし)

唐津市は、佐賀県の北西部に位置し、玄界灘に面する美しい海沿いの都市です。佐賀県内では、県庁所在地の佐賀市に次ぐ人口を誇り、北部地域の中心都市として栄えています。歴史的な城下町としての魅力を持つ一方、自然景勝地や伝統文化も多く存在し、国内外から多くの観光客を惹きつけています。

概要

唐津市は、旧肥前国東松浦郡に属し、唐津藩の城下町として栄えてきました。街の中心には、唐津神社があり、その秋季例大祭「唐津くんち」は多くの観光客で賑わいます。また、日本三大松原の一つ「虹の松原」や、毎朝新鮮な海産物が揃う「呼子朝市」も有名です。さらに、伝統工芸品である唐津焼もこの地で生まれ、多くの愛好者を魅了しています。

平成の大合併を経て、2005年に唐津市と周辺地域が新たに統合され、現在の市域が形成されました。さらに、2006年には七山村が編入され、より広域な都市となりました。

経済と都市圏

唐津市は、玄海町とともに唐津都市圏を形成し、約13万人の人口を擁します。市民の多くは唐津市内で生活しながら、近隣の福岡都市圏や佐賀都市圏にも通勤・通学しています。特に旧浜玉町と旧厳木町の住民は、それぞれ福岡と佐賀へのアクセスが良く、通勤圏内として利用されています。

地理と風景

地形

唐津市の地形は、松浦川や玉島川によって形成された唐津平野と、丘陵地帯である「上場(うわば)」と呼ばれる玄武岩台地から成り立っています。東側は背振山地、西側は伊万里湾、南側は杵島山地、北側は玄界灘に面しています。松浦川は、唐津湾に注ぎ、唐津の豊かな自然景観の一部を形成しています。リアス式海岸の風景も特徴的で、特に北西部の海岸線は、入り組んだ美しい景色が広がっています。

また、唐津市の地理的特徴として、東経130度経線が市のほぼ中心を通過しています。このため、西九州自動車道の唐津インターチェンジには、東経130度が通過することを示す標識が設置されています。

虹の松原と鏡山

虹の松原は、唐津市の代表的な景勝地で、クロマツの林が西は松浦川河口付近から東の浜崎駅付近まで広がっています。この景勝地は唐津の象徴とも言われ、四季折々の美しい風景を楽しむことができます。特に、鏡山の展望台から眺める虹の松原や唐津市街の景色は圧巻で、多くの観光客が訪れる人気のスポットです。虹の松原やその周辺は、玄海国定公園に指定されており、自然の豊かさが保たれています。

河川と島々

市内には、松浦川、玉島川、厳木川、町田川など、いくつかの主要な河川が流れています。これらの川は、地域の豊かな自然環境を支える重要な水源であり、唐津の農業や生活に欠かせない存在です。

唐津市の沖合には、多くの有人島があります。代表的な島々には、観光名所でもある「高島」や、無人島の「鳥島」、漁業が盛んな「加部島」などがあります。加部島は本土と呼子大橋で結ばれており、呼子の海産物を味わいながら美しい海の景色を楽しむことができます。これらの島々も唐津市の観光資源として、多くの観光客を引き寄せています。

気候

唐津市は太平洋側気候に属していますが、九州型の気候特性を持ち、冬季には日照時間が少なくなることが特徴です。沿岸部では、一年を通して昼夜の寒暖差が少なく、猛暑日や真冬日はほとんどありません。また、台風の直撃も比較的少なく、風速は年間を通じて8m〜12m程度です。冬の玄界灘からの強風や春一番による風が強まることがありますが、一般的には穏やかな気候と言えます。

歴史

唐津の起源

唐津の歴史は古く、元々この地域は「松浦(まつら)」と呼ばれていました。この地名は、松浦川や松浦潟に由来しています。唐津という名前が使われるようになったのは、17世紀初頭に松浦川河口付近に城下町が造成されたことに始まります。この城下町が「唐津」と名付けられ、1889年の町村制施行により、唐津町が誕生しました。その後、周辺の町村が次々と合併し、現在の唐津市となっています。

先史時代と縄文時代

唐津市の歴史は、先史時代にまでさかのぼります。縄文時代晩期には、この地域で水田稲作が行われていたことが確認されています。魏志倭人伝に登場する「末盧国(まつろこく)」は、現在の唐津市付近に存在したと考えられています。また、古墳時代には、この地域に多数の古墳が築かれ、その中でも「久里双水古墳」は国内最古級の前方後円墳として知られています。

中世の唐津

律令制時代には、唐津市は肥前国松浦郡に属しており、『肥前国風土記』にもその記録が残されています。平安時代中頃になると、国司政治が緩み、松浦地方の豪族たちが地域を支配するようになりました。これらの豪族は「松浦党」と呼ばれ、その中でも波多地区を拠点とした波多氏が最大の勢力を誇りました。彼らは各地に城を築き、地域を支配しました。

豊臣秀吉と唐津

戦国時代には、唐津市は豊臣秀吉の九州征伐により大きな影響を受けました。1591年には、豊臣秀吉が朝鮮出兵の拠点として名護屋城を築き、唐津地域は戦略的な拠点となりました。その後、寺沢広高が唐津藩を統治し、唐津城を築城しました。1608年に唐津城とその城下町が完成し、現在の唐津市の基盤が形成されました。

名所・名勝

唐津市の代表的な観光スポット

唐津市には、歴史的な名所や自然の美しさを堪能できる観光スポットが数多く点在しています。これらの名所は、唐津市を訪れる観光客にとって大きな魅力となっており、地域の文化や歴史を深く理解する機会を提供します。

菜畑遺跡(国の史跡)

菜畑遺跡は、国の史跡に指定されており、日本における古代の農業文化を知る上で非常に重要な場所です。この遺跡は、かつての水耕農業が行われていたことを示す貴重な証拠であり、訪れる人々にその歴史的価値を伝えています。

久里双水古墳

久里双水古墳は、唐津市の歴史的遺産の一つで、古代の権力者が埋葬された場所です。この古墳は、地域の考古学的な研究においても重要な位置を占めており、見学者に古代の文化と歴史を感じさせます。

名護屋城跡(国の特別史跡)

名護屋城跡は、豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に拠点とした城の跡です。国の特別史跡に指定されており、広大な敷地とその壮大な歴史に触れることができる観光スポットとして人気があります。

岸岳城跡(佐賀県指定史跡)

岸岳城跡は、佐賀県指定の史跡で、戦国時代の防衛拠点として重要な役割を果たした城です。現在でもその跡地を訪れることができ、当時の歴史を感じることができます。

唐津城

唐津城は「舞鶴城」の名でも知られ、美しい唐津湾を見下ろす位置にあります。城からは、唐津の街並みと玄界灘の景色を一望でき、多くの観光客が訪れる人気スポットです。

旧大島邸

旧大島邸は、唐津の伝統的な建築様式を残す重要な文化財です。この邸宅は、歴史的価値が高く、当時の豪商の生活様式を今に伝えています。

旧高取家住宅(高取伊好邸)(国の重要文化財)

旧高取家住宅は、唐津の著名な豪商、高取伊好が暮らした邸宅です。国の重要文化財に指定されており、見学者はその豪華な建築と歴史的価値を感じることができます。

旧三菱合資会社唐津支店(佐賀県指定重要文化財)

旧三菱合資会社唐津支店は、現在は唐津市歴史民俗資料館として公開されています。この建物は、明治時代の商業施設として建設されたもので、当時の経済活動を今に伝えています。

旧唐津銀行本店(佐賀県指定重要文化財)

旧唐津銀行本店は、唐津の金融史を語る上で欠かせない建物です。現在もその壮麗な外観が残されており、佐賀県指定の重要文化財として保護されています。

唐津焼総合展示場

唐津焼は、日本の伝統的な陶器の一つであり、唐津市で盛んに生産されています。唐津焼総合展示場では、その美しい作品を展示・販売しており、観光客はここで唐津焼の魅力を堪能することができます。

虹の松原(国の特別名勝、日本の道100選など)

虹の松原は、唐津市を代表する美しい松林で、国の特別名勝にも指定されています。約4.5kmにもわたる松林が続き、自然の美しさを感じながらの散策が楽しめます。また、日本の道100選にも選ばれており、ドライブコースとしても人気です。

屋形石の七ツ釜(国の天然記念物)

七ツ釜は、波の侵食によって作り出された美しい海食洞で、国の天然記念物に指定されています。特にボートでの観光が人気で、洞窟内に差し込む光が幻想的な景色を作り出します。

鏡山

鏡山は、唐津市を見渡すことができる絶景ポイントとして知られています。山頂からは、虹の松原や唐津湾の絶景が広がり、多くの観光客がその美しい景色を楽しみに訪れます。

波戸岬

波戸岬は、玄界灘に突き出した岬で、美しい海岸線を望むことができます。夕日が沈む時間帯には特にロマンチックな景色が広がり、デートスポットとしても人気です。

いろは島

いろは島は、唐津市に隣接する長崎県松浦市に属する美しい島々です。その風光明媚な景色は、唐津市からの観光スポットとしても人気があります。

観音の滝(日本の滝百選)

観音の滝は、日本の滝百選にも選ばれた美しい滝です。高さ約40メートルから流れ落ちる水は迫力満点で、周囲の自然との調和が見事です。

見帰りの滝(日本の滝百選)

見帰りの滝は、その美しさから「見返るほどの滝」として知られています。日本の滝百選に選ばれたこの滝は、四季折々の風景が楽しめる名所です。

蕨野の棚田(重要文化的景観)

蕨野の棚田は、重要文化的景観に指定されており、昔ながらの農村風景を残す美しい棚田です。自然の中でのんびりと散策しながら、日本の原風景を堪能することができます。

樫原湿原

樫原湿原は、貴重な湿地帯として保護されており、多様な動植物が生息しています。自然愛好家にとっては、観察や散策に最適なスポットです。

立神岩

立神岩は、玄界灘にそびえ立つ巨岩で、その壮大な姿が観光客を魅了します。特に波の荒い日には、波しぶきが岩に打ち寄せる様子が迫力満点です。

「にあんちゃん」の里 記念碑

「にあんちゃん」は、唐津市出身の作家・安部公房の小説で、その舞台となった地には記念碑が建てられています。文学ファンにとっては訪れる価値のあるスポットです。

社寺

唐津市の神社仏閣

唐津市には、歴史的な神社や寺院も多く、地元の人々の信仰の対象として大切にされています。

田島神社

田島神社は、名神大社であり、国幣中社として格式の高い神社です。また、神社本庁の別表神社としても知られています。

鏡神社

鏡神社は、唐津市の人々に古くから信仰されてきた神社です。地域の守護神として、多くの参拝者が訪れます。

増田神社

増田神社は、日本で唯一、警察官を祀った神社として知られています。珍しい由来を持つこの神社は、特に警察関係者にとって特別な場所です。

宝当神社

宝当神社は、宝くじの当選祈願で有名な神社で、全国から多くの参拝者が訪れます。宝くじを手にした参拝者が祈願する光景が見られるのが特徴です。

医王寺

医王寺は、唐津市内の歴史ある寺院で、地域の人々の信仰を集めています。静かな境内で心を落ち着けることができるスポットです。

恵日寺

恵日寺は、唐津市内で有名な寺院で、その歴史的背景や建造物が観光客にも人気です。

温泉

唐津市の癒しの温泉地

唐津市には、観光客が疲れを癒すことができる温泉地が点在しています。豊かな自然に囲まれた温泉で、心身ともにリフレッシュしましょう。

唐津温泉

唐津温泉は、市内中心部に位置し、観光の合間に立ち寄れる便利な温泉地です。リラックスしたひとときを過ごせます。

七山温泉

七山温泉は、唐津市の郊外にある自然豊かな温泉地で、森林浴を楽しみながら温泉に浸かることができます。

佐里温泉

佐里温泉は、静かな環境でゆっくりと温泉を楽しめる場所として知られています。観光で疲れた体を癒すのに最適な温泉地です。

いろは島温泉

いろは島温泉は、美しい海を眺めながら入浴できる絶景の温泉地です。旅の疲れを癒しながら、自然の美しさを堪能できます。

直売所

唐津市の特産品を楽しめる直売所

唐津市では、地元の特産品を購入できる直売所も多くあります。新鮮な農産物や特産品をお土産として持ち帰ることができます。

唐津市ふるさと会館アルピノ

唐津駅前に位置する唐津市ふるさと会館アルピノでは、地元の特産品やお土産を購入できます。観光の際にぜひ立ち寄ってみてください。

唐津うまかもん市場

久里にある唐津うまかもん市場では、新鮮な野菜や魚介類が豊富に揃っています。地元の食材を楽しみたい方におすすめです。

久里おやさい村

久里おやさい村では、地元で栽培された新鮮な野菜を購入できます。新鮮な食材を使った料理を楽しみたい方に最適です。

道の駅厳木風のふるさと館

厳木町にある道の駅では、地元の特産品を販売しており、観光客に人気のスポットです。

道の駅桃山天下市

鎮西町に位置する道の駅桃山天下市は、地元の食材やお土産が揃う人気の施設です。観光の途中に立ち寄ってみてください。

マリンセンターおさかな村

浜玉町にあるマリンセンターおさかな村では、新鮮な魚介類を購入でき、観光客に大変人気です。地元の海産物を堪能したい方におすすめの場所です。

食文化の魅力

唐津市は、海に面した立地から新鮮な魚介類を豊富に楽しめる食文化が発達しています。特に「いか料理」は唐津市を代表するグルメであり、呼子地区でのイカの活き造りは全国的にも有名です。その他にも、以下のような特色ある食文化があります。

いかしゅうまい

呼子名物の「いかしゅうまい」は、ふんわりとした食感とイカの風味が特徴で、観光客に人気の一品です。

ツガニ飯

唐津市の玉島川で捕獲された「ツガニ」を使用した炊き込みご飯で、地元の家庭料理として親しまれています。

からつバーガー

「からつバーガー」は、唐津に昔からあるハンバーガーショップで販売されている人気のハンバーガーです。特に虹の松原にある店舗は観光客に人気で、創業50周年を迎えました。

祭事と催事

唐津くんち

唐津市最大の祭りである「唐津くんち」は、毎年11月に開催され、期間中には50万人以上の観光客が訪れます。山車を引いて市内を練り歩くこの祭りは、国の重要無形民俗文化財にも指定されており、その豪華絢爛な様子は訪れる人々を魅了します。

呼子大綱引き

6月の第1土曜・日曜に開催される「呼子大綱引き」は、国の重要無形民俗文化財に指定されています。地元住民や観光客が一体となって行うこの伝統行事は、唐津市の夏の風物詩として定着しています。

その他の祭事

唐津市内では、夏の祇園祭や秋の浮立(ふりゅう)、各地のくんちなど、多彩な祭事が行われています。特に山笠を使った祭りは、市内各地で見られ、その迫力に圧倒されることでしょう。

まとめ

唐津市は、その豊かな自然、歴史的な背景、そして文化的な魅力に溢れた観光地です。虹の松原や呼子朝市といった名所や、唐津焼などの伝統工芸品、そしてイカ料理を中心とした美食文化が訪れる人々を魅了します。四季折々の祭事やイベントも充実しており、何度訪れても新しい発見がある街です。ぜひ、次の旅行先として唐津市を訪れてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
唐津市
(からつし)

唐津・呼子

佐賀県