波戸岬は、佐賀県唐津市鎮西町の東松浦半島最北端に位置し、玄界灘に面しています。この岬は玄海国定公園の一部であり、美しい景観と豊かな自然環境が魅力的です。東松浦半島は、リアス式海岸が特徴的で、入り組んだ海岸線が続きます。
波戸岬は、名護屋浦と串浦の間にある小さな半島の先端に位置しています。東側には名護屋浦を挟んで加部島や呼子、北には壱岐水道を挟んで加唐島や松島などの島々が広がっています。この地域は、玄武岩類の丘陵性溶岩台地である上場台地の延長にあり、自然が豊かです。
岬周辺には、唐津市玄海海中展望塔という日本海側唯一の海中展望塔があり、ほかにも海水浴場や国民宿舎、キャンプ場などの観光施設が整備されています。また、1956年には玄海国定公園の一角として指定され、1970年には国内初の海中公園として国定公園に指定されました。
波戸岬の南方には、1592年に豊臣秀吉が築いた名護屋城跡があり、その周辺には130か所以上の大名の陣跡が点在しています。この地域には、増田長盛や生駒親正、北条氏盛、島津義弘などの著名な大名の陣跡が残されており、歴史的な価値が高い場所です。特に島津義弘陣跡や生駒親正陣跡は、国の特別史跡として名護屋城と共に保存されています。
1996年には波戸岬が「日本の渚百選」に選ばれ、さらに2008年には「ハート岬」という愛称からNPO法人地域活性化支援センターによって「恋人の聖地サテライト」として認定されました。2009年には、恋人の聖地として記念のモニュメントも設置され、多くのカップルが訪れる人気のスポットとなっています。
唐津市玄海海中展望塔は、日本全国に8基ある海中展望塔のうち、唯一日本海にある展望塔です。1974年に唐津国民宿舎波戸岬により建設され、その後、自治体による運営が行われてきました。2007年からは指定管理者制度が導入され、観光客への対応がさらに充実しました。
この展望塔は、陸地と長さ約86メートルの桟橋でつながっており、海底からの高さは20.3メートル、直径は基部が10メートル、天頂が4メートルの漏斗型をしています。海上デッキからは玄界灘に浮かぶ島々を一望でき、24個の海中窓がある水深7メートルの展望室からは、クロダイやカサフグ、イシダイなど約30種類の魚が自然のまま観察できます。また、海草や貝類も見ることができ、時には対馬海流に流された熱帯魚も目撃されることがあります。
1978年から2007年までの自治体管理期間中、累計で343万4000人の観光客が訪れ、その後、指定管理制度を導入した2007年4月からの4年間で30万人が訪れています。これにより、波戸岬は観光地としての重要な役割を担っています。
唐津市玄海海中展望塔は、リニューアル工事のため2023年9月1日から2024年3月末まで一時閉館されましたが、2024年4月1日に新たにリニューアルオープンし、さらに多くの観光客を迎え入れる予定です。
波戸岬へのアクセスは、名護屋城跡付近で国道204号と分岐する佐賀県道301号波戸岬線を利用します。県道の起点部には有料の駐車場が整備されており、岬の最先端部までは徒歩でアクセス可能です。また、昭和バスが唐津大手口バスセンターと波戸岬国民宿舎を結んでいるため、公共交通機関でもアクセス可能です。
波戸岬の駐車場周辺には、サザエのつぼ焼き小屋が並び、観光客に人気の名物料理が楽しめます。サザエのほかにも、イカの一夜干しやアワビ、カキなど、その場で焼いて食べられる海鮮料理が提供されており、訪れた際にはぜひ味わいたい一品です。
また、波戸岬の海水浴場の入り口には、韓国の西帰浦市から贈られた石像「トルハルバン」が設置されています。この像は、唐津市と西帰浦市が姉妹都市を結んで20周年を記念して贈られたもので、済州島の守り神として知られています。
さらに、近くの波戸漁港では、毎年お盆の時期に「海中綱引き」という伝統行事が行われます。この行事は、朝鮮出兵の際に兵士の士気を高めるために始まり、後に疫病払いのための儀式として続けられてきました。現在も地元の伝統行事として、多くの人々が参加しています。
波戸岬は、美しい自然と豊かな歴史、そして多彩な観光施設が揃った魅力的な場所です。玄界灘の壮大な景色を楽しみながら、歴史的な名護屋城跡や海中展望塔を訪れたり、新鮮な海産物を味わったりと、さまざまな体験ができる観光地です。また、恋人の聖地としても人気があり、カップルや家族連れにおすすめのスポットです。波戸岬を訪れる際には、その美しい自然と豊かな文化を存分に楽しんでください。